تسجيل الدخول今日はめぐと約束した日曜日、以前のようにウチで会話の実践訓練をする事になっている。
「いらっしゃい。さ、入って入って~」 「お邪魔しまーす」 「今日はありがとね」 「ううん。私でよければいつでも協力するから」 めぐをソファーに座らせ、お茶を出し、しばらくするとお兄ちゃんが降りてきた。 2人は軽く挨拶をし向かい合って座る。 私は二人を同時に見渡せる位置に座る。 さて、ここからどういう話題に持ち込むのかな~。「今日は敢えて学校の制服を着てきたんですけど、どうですか?」
「凄く似合ってるよ」 「有難うございます……」と言って顔を赤くする2人。
あぁもう、見てらんない。「めぐー、ちょっとこっち来て~」
「なにー?」 「制服を褒められて嬉しい気持ちはわかるけど、自分から話題提供しちゃダメ」 「あっ! そっかぁ。ごめん~」 私が指摘すると、口を一文字に結んでそのまま席に戻った。 素直なところもホントかわいい。その後、お兄ちゃんの観察眼も冴え渡り会話が弾んだ。
ワンポイントアクセサリーに気づいた時は流石の私も驚いた。既に日が落ちかけていたので
「それじゃ、今日はお邪魔しました」
と言ってめぐは帰っていった。
お兄ちゃんを呼んで早めの会議をする事にした。「どうだった?」
「やっぱり兄妹なんだなって思った」手ごたえアリと言わんばかりの顔で訊いてきたのでそう答えると、ポカンとした顔をしていた。
「どういう意味だ? 兄妹なのは当たり前だろ」 「そうじゃなくて、観察眼の事」 「観察眼?」 「そう」以前にもまして観察眼が鋭くなったようだ。
めぐにはホント感謝しなきゃ。「私も最初から全部出来てた訳じゃないんだよ。クラスで人気のある子を観察してそれを真似てっていうのを繰り返してきたの。勉強や部活は自分の努力だけどね」
「柚希にもそんな時代があったんだな」お兄ちゃんがそれを知らないのも無理はない。
私が努力を重ねてきた間……そう、『あの日』からずっと|独《ひとり》で苦しんできたんだから。 「昔はとにかくいつも笑顔でいれば周りから避けられる事は無いと思ってたけど、それじゃダメだと思って観察と真似を始めて、そこに自分なりの考えを肉付けさせていく感じだった」だけど私が一番参考にしたのはお兄ちゃんなんだよ――。
昔の事が一瞬頭をよぎったけど、気を取り直して話を続ける。「それで、私とお兄ちゃんが似てるって話だったけど、やっぱり観察眼が他人より鋭いの」
「まぁ、人間観察位しかやる事なかったしな」 「春休みにお兄ちゃん言ってたでしょ? 口角を上げて笑ったよなって」 「ああ」 「普通の人はあの程度では気づかないんだよ。気づくとしたら観察眼が異様に高い人だけ。だからやっぱり兄妹なんだなぁって思ったの」 「そういう事だったのか」 「だからお兄ちゃんは観察を続けつつ、他の課題に取り組んで欲しいの」 「わかった。俺なりに努力するよ」丁度親が帰ってきたので会議は終了した。
いつも夜にやっている会議は今日は無しにした。「じゃあまたね、お兄ちゃん」
「あぁ」朝、いつものようにお兄ちゃんと言葉を交わす。
高校に入ってお兄ちゃんがイメチェンして以来、学校で見かけたら声をかけるようにしている。 少しずつ周囲に兄妹ということを認識させるためだ。下駄箱で声をかけられる。
「ねぇ佐藤。さっきあんたが声かけてたのってもしかして……」
「お兄ちゃんだけど?」 「ウッソマジで!? キャラ全然違うじゃん!」 「それな! 俺も思った! しかもあの中居先輩と一緒にいるんだもんなぁ」 「中居先輩ってそんなに有名なの?」 「俺、同じ中学だったけど人気すごかったぞ。女子なんてファンクラブあったし」 「なんかわかるかも~。あ、でもアタシは友也先輩の方がタイプかも~」 「だよね~。ねぇ柚希、紹介してよ~」 「アハハ。一応話しとくよ」どうやらお兄ちゃんのことを知る生徒も増えてきたようだ。
一部では、全学年でも一際目立つ中居先輩を抑えて人気を得ている。 その影響か、妹である私も学年内で目立ちつつあった。新学期が始まって3週間が経った。
部活も交友関係も上々、お兄ちゃんもうまくやってるみたい。 そんな中計画の要なのは、2年の新島楓。 自他共に認める学校一のアイドルだが、周囲に隠している素顔がある。 そんな新島先輩と同じテニス部でひいきにされている私とめぐ。 私の場合ひいきというよりは同盟なんだけどね。「なぁ染谷! 楓先輩と同じテニス部なんだろ? 俺の事紹介してくれよ~。あ、佐藤でもいいからさ! 頼むよ~」
「あんた何言ってんの? 楓先輩がその辺の一般人相手にするわけないじゃん。だよね佐藤?」こいつらは新島先輩を追いかけてきた信者だ。
私たちがテニス部後輩というだけで勝手な事を言ってくる。 女子にいたっては新島先輩を慕うような事を言いいながら、内心おこぼれをもらう気満々だ。 見え透いた浅慮(せんりょ)に呆れて笑えてくるが 「どうだろうね~。アタックしてみたら? 新島先輩ホント優しいからワンチャンあるかもよ~」と、笑って適当に話を合わせる。
その気になってはしゃいでる男子とそれをからかう女子。 そんな光景をめぐは微笑ましく見ている。だけど本当の新島先輩は、そこら辺の、ましてや1年男子を相手にするわけがない。
それほどの影響力を持った人がお兄ちゃんに好意を寄せたのなら、学校中の誰もがお兄ちゃんをリア充と認める事だろう。新島先輩とお兄ちゃんの良好な関係を築く。
そしてテニス部の後輩として私も親しく接する。 当面の計画はこれでいくことになるだろう。 放課後部活が終わり、手洗い場で汗を拭っていると「染谷さん、ちょっといいかな?」
「え? わたし?」 「うん。話があるんだけど付き合ってもらえないかな?」と、隣のクラスの田村くんがめぐに声を掛けて連れ出した。
あの感じだとまためぐは告白されるのだろう。 と考えていると「どうしたの柚希ちゃん?」
「あ、新島先輩……」 「よし、私達も行くわよ」 「え? ちょ、ちょっと先輩……」一瞬で状況を理解した先輩は何やら難しい顔をして、私を連れて2人の後を追った。
「入学した時からずっと可愛いと思ってた。俺と付き合ってください」
「……ごめんない、他に好きな人がいるんです」 「そんな……誰か教えてよ! じゃないと諦められない!」 「……2年の佐藤友也先輩です」それを聞くと、田村くんの様子が一変した。
「はぁ? 冗談だろ?」
「どういう意味ですか?」 「だって、佐藤友也って元ヲタボッチの佐藤友也だろ? 断る為に適当言ってるんだろ?」やはりまだお兄ちゃんの事を良く思っていない奴が居るようだ。
お兄ちゃんのことを悪く言われるとイライラする。 「違います! 私は友也さんが好きなんです!」 「はっ! どうせ顔だろ? あ~あ、イケメンはいいよなぁ、顔さえ良ければヲタクでもモテるんだもんなぁ」 「そんな……ヒドい……」お兄ちゃんの事だけじゃなく、めぐの事も悪く言うなんて許せない。
私がそう思うのと同時に新島先輩が飛び出した。 私も後に続く。「いい加減にしなさい!」
「に、新島先輩!」 「勝手に話を聞いていたのは悪いけど、今のは言い過ぎなんじゃない?」私が言いたい事を新島先輩が言ってくれた。だけど先輩は何に対して怒っているのだろう。
めぐがヒドい事を言われたから? それとも、お兄ちゃんを馬鹿にされたから? 「新島先輩には関係ないじゃないですか」 「関係あるわ。染谷さんも佐藤くんも私の大切な友人だもの」 「っ! 新島先輩が悪いんですよ! 俺の告白を断ったから! だから……」 「だから妥協して染谷さんに告白したっていうの?」 「そうだよ! それの何が悪いんですか!」田村がそう答えた瞬間、新島先輩の纏っている空気が凍える様に感じた。
まずい。〈素の〉新島楓になってる。「あなたいい加減に――」
このままじゃアイドルとしての先輩のイメージが崩れる。
私がなんとかしなきゃ! と思った瞬間「いい加減にしろよ田村!」
いつの間にか私の背後に中居先輩が立っていた。
「な、中居先輩、こ、これは……」
中居先輩の登場に田村がたじろぐ。
新島先輩も驚いている。 「黙って聞いてりゃぁ俺のツレに散々言ってくれるじゃねぇか」 「そ、それは……でも俺はマジで染谷さんに本気なんです!」中居先輩は「はぁ」と呆れた様にため息を吐いた後、無言で田村に詰め寄る。
すると突然、田村の胸ぐらを掴んだ。「ふざけんじゃねぇ! お前さっき妥協したって言ったじゃねぇか!」
「ぐぅ……くっ、そ、それは……」田村は言葉を失う。
その様子を見て、中居先輩は胸ぐらから手を突き放すと「次また俺のツレになんかしてみろ、その時は……分かってるよな?」
「すみませんでした!」と言って田村はその場から逃げ出した。
私はめぐに駆け寄り、そっと肩に抱き寄せる。 そして私が中居先輩に頭を下げると、めぐも涙を堪えながら俯きがちに頭を下げた。「中居ありがとね」
「気にすんな。俺も佐藤のことを悪く言われて頭にきたからな」 「中居も佐藤くんの事認めてたんだ~」 「うっせ! この事は誰にも言うんじゃねぇぞ」 「出た~、中居のツンデレ~」 「あーーウゼ~」あの中居先輩があしらわれている。
貴重なシーンを見ちゃったかも。「あはは。でもどうしてこんな所に居たの?」
「あっ! やっべ、備品の片付けの最中だったわ。んじゃ俺はもう行くわ」と言った走り出したが、途中で止まって振り返り
「新島、今日の事はアイツ等には黙っとけよ。特に田口にはな」
「分かってるって~」新島先輩に釘を刺した中居先輩は、今度こそ去っていった。
中居先輩までもがお兄ちゃんを認めているなら計画は順調といえる。 それに今回の事で、むやみにめぐやお兄ちゃんにちょっかいを出そうと考える1年は居なくなるだろう。 今回、めぐは可哀想な目にあってしまったけど収穫があった。 だけど、めぐには二度とこんな目には遭って欲しくない。 そんなことを考えながらめぐと帰路に就いた。お兄ちゃんが私のことをずっと好きだった……? にわかには信じられない言葉を聞いて混乱する。「だから柚希のことを気持ち悪いだなんて思わないし、俺のことが好きだと言ってくれて嬉しい」 真っ直ぐ、視線を外さずに言葉を浴びせてくる。 私のことを好きだと言ってくれて凄く嬉しい! だけど、それをどこまで信じていいか疑っている自分もいる。 そんな自分が嫌だとわかりつつも、私の口は勝手に動いていた。「新島先輩は? お兄ちゃんの初恋は新島先輩だったって言ってたよね」 そう問いかけると、お兄ちゃんは困った様に頭を掻きながら答える。「確かに楓は俺の初恋の女の子だ。でもそれは柚希以外での事なんだ」「私以外で?」 首を傾げる私にお兄ちゃんは説明を始めた。「ああ。さっきも言った通り、小さい頃から柚希の事を一人の女の子として好きだった。だけどそれは歳を重ねていく内に許されない恋なんだと知った。だから柚希以外の子を好きになろうと思った。けど、その時の俺は周りから孤立していたし、どこかで無理かもなって思いもあった」 孤立してしまった原因を作ってしまったのは私の所為だし、あの一件で余計にお兄ちゃんの事が好きになったんだっけ。「そんな時、一人の女の子が俺に話しかけてくれた。周りからボッチだのヲタクだの言われてる俺に対して優しく接してくれた。その当時の俺は自ら人を避けていたけど、その女の子と話している間の空間は凄く居心地がよかったんだ。そういう事も重なって俺は始めて柚希以外の女の子を好きになった」 そう語ってくれたお兄ちゃんに対して、私は更に意地悪な質問をする。「水瀬先輩の好意や、友華さんと沙月ちゃんに対してはどうなの?」「こんな俺に好意を寄せてくれるのは凄く嬉しかったし、俺自身みんなに惹かれていってた」 そして深く息を吐き、申し訳無さそうな顔をする。「だから皆とは付き合えないと伝える決意をするのに時間が掛かっちゃって申し訳ないと思ってる」 そう
私は今何て言った? 部屋の前で盗み聞きをして、沙月ちゃんとお兄ちゃんがそういう会話が聞こえてきて……無意識に部屋に飛び込んだ。 その後に沙月ちゃんと口論になって……それから――――『お兄ちゃんの事が好きなんだから!!』 そうだ……お兄ちゃんを盗られたくない一心で――――「柚希……今のって」 お兄ちゃんは状況が理解出来ないといった感じで見つめている。 それもそうだ。突然妹からあんな事言われたら混乱するに決まってる。「やったね柚希ちゃん。やっと言えたじゃん!」 沙月ちゃんが嗜虐的な笑みを浮かべながら私の肩をポンッと叩く。 ハメられた! きっと私が部屋の外で話を聞いてると踏んで沙月ちゃんは最初からこうなる様にお兄ちゃんに色仕掛けしてたんだ! 「っ!」「柚希ちゃん!」「ちょ、待てよ!」 どうしよう! どうしよう! どうしよう! どうしよう! 言うつもりは無かったのに! 妹として傍にいようって決めてたのに! 幾ら沙月ちゃんに煽られたからってあんな事言っちゃうなんて!「はぁ、はぁ……ここは?」 お兄ちゃんから逃げる事しか考えて無かったから、いつの間にか公園に辿り着いちゃった。 でも、ここまで来れば流石に見つかんないよね……。「はぁ……これからどうしよう」 ベンチに腰を下ろすと、つい言葉が漏れてしまった。「ビックリしてたなぁ……」 そりゃそうだよね。実の妹が異性として兄を好きだなんて思ってもみないだろうし。 はぁ……流石に嫌われちゃったよね……。「柚希! ハァハァ&h
『自分の気持に素直になってみたら?』 翌日になっても新島先輩の言葉が頭から離れない。 素直になっても報われないなら……もしかしたら気持ち悪い妹だと思われたらと考えてしまう。「ダメだなぁ……ネガティブな事しか浮かんでこない」 そう独りごちて、思考を振り払う様に頭を振る。それから大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせてお兄ちゃんの部屋のドアをノックして中に入った。「どう? お兄ちゃん。少しは良くなった?」「ああ、熱も下がって倦怠感も無くなったよ」 そう言って腕をぐるぐる回す。 「良かった。でもあまり調子に乗らないように! 今日一日は安静にしててね」「大丈夫だって」「ダメでーす。風邪はひき始めと治りかけが一番重要なんだから」「母さんみたいな事言うな」「はいはい、なんとでも言いなさい。とにかく安静にしてるんだよ」「はぁ、分かったよ」 諦めたようにベッドに横になるお兄ちゃんを見届けて部屋を出た。 少し体調が良くなったからって直ぐ調子に乗るんだから。 でも、良くなってよかった。 リビングでテレビを見ながら勉強しているとインターホンが鳴った。 まさかまた新島先輩が来たのかな? と頭の隅で考えつつモニターを確認すると、今度は沙月ちゃんが立っていた。 玄関を開けると沙月ちゃんは元気良く挨拶してくる。「柚希ちゃんやっほ~」「やっほー。もしかしてお兄ちゃんのお見舞い?」「うん。急だったけど大丈夫かな?」「大丈夫だよ。体調も良くなってきてるし」「よかった~」 家に招き入れお兄ちゃんの部屋まで案内する間、疑問に思った事を聞いてみる。「そういえば、どうしてお兄ちゃんが体調崩したって知ったの? 心配掛けない様に黙ってたのに」「昨日南さんから聞いたんだ~。南さんは楓さんから聞いたって言ってた」「そうだ
水瀬先輩の想いを聞いてから数週間が経った。 当初懸念していた接し方や態度も以前と変わらず、普段どおり接してきてくれるとお兄ちゃんから聞いた。 それに一番驚いたのは水瀬先輩が合コンにハマった事だ。 沙月ちゃんに無理矢理連れて行かれた合コンで、チヤホヤされたのが嬉しかったらしい。 合コンの度に「やっぱりトモより良い男いないや」とボヤいていたので、今でもお兄ちゃんの事は好きなんだと思う。 だけど水瀬先輩はお兄ちゃんにはそんな素振りを一切見せていないらしい。 多分それはお兄ちゃんが好きで、幸せを願っているからこそなんだと思う。 沙月ちゃんのお陰で水瀬先輩は気持ちの整理が出来たのは嬉しい反面、合コンにハマってしまっている事に関してはお兄ちゃんも心配していた。「沙月には感謝だけど、他にやりようはなかったのかなぁ」 とお兄ちゃんがボヤいていた。 まぁ自分の事を好きで居てくれた女の子がいきなり合コンにハマりだしたのだから複雑な気持ちなのだろう。 お兄ちゃんだけでなくグループの人達全員が水瀬先輩の変わりように戸惑っていたみたいだ。 それも最初の内だけで、今では水瀬先輩=合コンというキャラが定着しつつあるらしい。 実際私も何度か誘われたが丁重に断った。 そんな出来事がありながら中間試験も終了し試験休みに入ったのだが、休みに入った途端、お兄ちゃんが熱を出して倒れた。 そして今は看病の真っ最中だ。「もう、お兄ちゃんは無理し過ぎだよ」「ゴホッゴホッ! すまん……」 どうしてこうなったかというと、文化祭のライブが切っ掛けだった。 振替休日が終わり学校へ行くと、1年から3年まで分け隔てなく女子から猛アプローチを受けていた。 授業が終わり帰宅する時には、校門に他校の女子が出待ちまでしてたし。 アプローチされても軽く流せばいいのにお兄ちゃんは一人ひとり丁寧に対応し、睡眠時間をへらしてまでファン達の相手をしていた。 気持ちを無下にできないっていうお兄ちゃんらしい優しさではあったけ
昨日は凄い一日だったなぁ。 お兄ちゃんが水瀬先輩を振るシーンを見ちゃったり、その後参加した打ち上げの後での新島先輩とお兄ちゃんのやり取りを聞いたり。 新島先輩がなんで私にまで話を聞かせたかは未だに分からないけど、問題は水瀬先輩なんだよなぁ。 もしこれで水瀬先輩がお兄ちゃんから離れていってしまったら絶対お兄ちゃんのグループの雰囲気は悪くなる。そうなると中居先輩が黙ってないだろうし……。「それに……お兄ちゃんの好きな子ってやっぱり――」 試験勉強をしていたがどうしてもその事が頭に浮かんでしまう。 残る候補は沙月ちゃんだけだからほぼ確定なんだろうけど……沙月ちゃんはお兄ちゃんのことどう思ってるんだろう。 私のことを応援すると言ってくれてたけど、私の事を理由に断って欲しくない。 例えお兄ちゃんが沙月ちゃんと付き合ったとしても、私はお兄ちゃんの妹だし、これまで通り傍に居られるだけでいい。 そんな事を考えているとスマホの通知音が鳴った。 スマホを手に取り確認する。「水瀬先輩からだ……」 アプリを開いてメッセージを確認する。〈大切な話があるから今から話せないかな?〉 大切な話ってなんだろう? それよりも気持ちの整理はついたのかな。 とりあえず返信しないと。 〈大丈夫ですよ〉 〈ありがと。沙月ちゃんにも話すから今グループ作るね〉 わざわざ3人だけのグループを作って話すことってなんだろう? そう考えている内にグループへの招待が来たので参加する。 沙月ちゃんも参加して全員揃ったところで通話が掛かってきた。「もしもし、こんにちは」「南さんこんにちは~」「2人ともこんちはー。急にごめんね~」「いえいえ、大丈夫ですよ」「はい、丁度暇してたので問題ないです」 話し方や声のトーンはいつもと変わらない。
新島先輩に続いて水瀬先輩までフラれた。 そうなるとお兄ちゃんの好きな女性は必然的に沙月ちゃんって事になる。 沙月ちゃんには今まで色々相談に乗って貰ったり、私の唯一の理解者でもあった。 だからこそ私が沙月ちゃんを祝福してあげないと。「待たせて悪いな」「ひゃっ!」 考え事をしていたらいつの間にかお兄ちゃんが校門にやってきていた。 ビックリして変な声出ちゃったけど不審に思われないよね?「なんだよその反応は。ちょっと傷ついたぞ?」「ご、ごめん。ちょっと考え事してたからお兄ちゃんに気づかなくて」「まぁ遅くなった俺が文句言えないか。んじゃ行くか」「……う、うん」 水瀬先輩はどうしたの? という言葉を飲み込んだ。 私があの現場を見ていたと知ったら色々気まずいだろうし、何より水瀬先輩の事を思うと私が見てたという事実は無かった事にした方がいい。「文化祭は楽しかったか?」「楽しかったよ。特にお兄ちゃんのライブは興奮したなぁ~」「その話はやめてくれ。皆褒め過ぎなんだよなぁ」「とか言ってお客さんを凄い煽ってたりしてたじゃん」「あ、あれはああやれって言われたから仕方なくだよ」「それにちゃっかりクラスの宣伝までしちゃって~」「うぅ、あれは……もうなんとでも言え!」「あはは、ごめんごめん」 お兄ちゃんを揶揄っていると打ち上げ会場に着いた。 入店すると沙月ちゃんが出迎えてくれた。「柚希ちゃんいらっしゃ~い」「おじゃましま~す」 沙月ちゃんと軽いハイタッチをしながら挨拶を交わす。「あ、友也さん遅いじゃないですか~」「掃除当番だったから皆には先に行ってて貰ったんだ」「そうだったんですね。じゃあ早く着替えてきてください、忙しいんですから」「ああ、わか……って今日は客で来てんだよ」「え? 手伝ってくれ







